未来のポーカープレイヤー達へ

またまたマカオにやってきました。2月上旬の新月から始まる1週間はチャイニーズニューイヤー、いわゆる旧正月を祝う特別な期間。カジノは人でごった返し、ステークスも通常より大きくなります。中国本土のお金持ちが集まるこの時期は、チャイナマネーが飛び交う・・・はずでした。数年前までは。

マカオバブルの失速、レギュラーのレベルアップなどが重なり、最近のマカオは簡単に勝てる環境とはとても言えません。かつてノールックオールインでチップをばらまいていた老板(ラオパン:シャチョーサンの意)はどこへやら。今やテーブルの半数以上がプロなこともしばしば。未だにネット上でマカオがおいしいとか書き込んでいる方々は、早く僕の右のシートに座ってもらえませんかね。

とはいえいつもより賑わうのもまた確か。そんな特需を狙い、ハンターもたくさん集まってきます。いわゆるポーカープロとされる方々。とある信頼筋によれば、日本人プロに限ってもなんと総勢18人が確認されたそう。

僕もまだまだ新参者と思っていましたが、気が付けば本格的なポーカー生活も早や4年。いつの間にやらキャリアとしてはそろそろ中堅クラスに差し掛かってきました。

今回は初心に帰って、僕が会社を辞めてポーカー旅人になるまでの話をしようと思います。

1 ポーカーは単なる趣味のつもりだった

僕がポーカーに出会ったのは2009年。30歳になったばかりの頃でした。すぐにその面白さの虜になり、友人達とのホームゲームに明け暮れることになります。そして2011年、転機となったのはaileenとの結婚。これを機に改めて人生設計を見つめ直してみたのです。

当時勤めていたのは大手企業。仕事は好きでやりがいもありましたし、出世も望めたと思います。職場環境も良好で、サラリーマンとしては恵まれた環境でした。勤め続けた場合のキャリアプランから、転職、起業などを先入観を排して検討していく中で、試みにポーカープレイヤーという選択肢も入れてみたのです。するとなんと、現実的に成り立ちそうな気がしてくるではないですか。少なくとも、机上検討の上では。

こうして、あくまでも趣味だったポーカーと初めて真剣に向き合うことになるのです。

2 ビジネスとしてのポーカーなんてあり得るのか

保守的な人生を送ってきた僕にとって、ポーカープレイヤーというハードボイルドな生き方には正直なところかなり抵抗がありました。

何はともあれ、まずは情報収集です。世界の市場、日本の位置付け、先達の状況、自分の能力と収支予測、業界の将来性。できる限りの情報を集め、整理しました。さすがに恥ずかしくて公開はできませんが、サラリーマンスキルを発揮して資料としての体裁まで整えたのは懐かしい思い出。

最も重視したのは市場規模。ポーカーの産業としての市場はもちろん、注視すべきはプレイヤーとしての市場です。実際のところ金銭的観点において、勝負の世界でポーカーほど恵まれた業界は他にありません。唯一にして圧倒的でしょう。それはポーカーの二つの要素に依るものです。

一つ目は、ポーカーの本質が金のやり取りだということ。必然的に膨大なマネーフローが発生します。その中で収入を得るということはとてもシンプル。目の前のプレイヤーからチップを奪えば良いのです。プロを擁する勝負事の世界は数あれど、ショービジネス無しに大金が動くのは、実は稀有な特性なのです。

最近日本でも話題になりつつあるeスポーツと比べてみればよく分かるでしょう。ポーカーもeスポーツも世界大会に優勝すればその賞金は数億円。それをもってあたかも似た業界と語られることがありますが、その本質が全く違うのは説明するまでも無いでしょう。

二つ目は、プレイヤー層の多様さ。ポーカーはギャンブルであり、社交場であり、エンターテイメントであり、スポーツ的ですらあります。様々な側面を併せ持つポーカーにとって、強さを求める競技的な要素はその一部分でしかありません。そのため、強くなることに専念するならば、ある程度上位を目指すことは難しく無いのです。

3  自身のスキルはどうでも良かった

さて、そんな世界で自分のポーカー能力が通用するのか。その当時、海外カジノでのプレイ経験は数回あったのみ。オンラインポーカーもほとんどやっていません。ホームゲームではそれなりに手応えがあったものの、ギャンブラーなんて誰しもが自信過剰なもの。冷静に考えれば井の中の蛙であることは容易に想像できます。

しかし実は、ポーカーの道に飛び込むにあたって、自分のポーカースキルはほとんど問題視していませんでした。他に類を見ない豊潤なポーカー経済ピラミッドでは、ある程度上位のプレイヤーには何らかの収入が発生しています。具体的な数字は分かりませんが、少なくとも全競技人口の上位1%程度に入れば間違いないでしょう。なら、大丈夫です。

僕には、死にもの狂いで勉強する覚悟がありました。

詳細な実態は業界に飛び込んでみなければ分かりませんでしたが、当時考えていたこの概念は、今振り返ってもあながち間違ってはいないのではないでしょうか。

そうして数か月かけてできる限りの情報を調べ、検討に検討を重ねました。やりたいことをやるのが幸せ、などという綺麗事に人生は預けられません。経済的見通し、やりがい、生活環境、将来性、その他諸々の条件をシビアに天秤に掛けて悩み抜き、辿り着いた結論。

それが、ポーカー道に身を投じるという一世一代の大決心だったのです。

4 武者修行を経てポーカー旅人へ

本格的にポーカー道に入ってからは、ラスベガスやマカオのカジノでひたすらポーカー。部屋では勉強と研究。ご飯食べてる時は仲間とハンドレビュー。さながら武者修行のような生活で、望み通りポーカーどっぷりの日々を送ることになります。

嬉しい誤算だったのは、ギャンブラー生活は意外と孤独では無かったこと。切磋琢磨する仲間が周りにいてくれたのは非常に有り難いものでした。それから苦節2年間、33歳というかなり遅いスタートながら必死でポーカーに取り組み、なんとかある程度の成果が出せるようになってきました。そして2014年、思い切ってaileenも退職。晴れて夫婦で世界旅をスタートさせることになるのでした。

武者修行時代と比べればポーカーに費やす時間は大幅に減らざるを得ませんが、世界を旅して回る今の生活は非常に楽しいものです。様々なカジノを訪れたこの旅も、あと1年足らずで一区切りさせる予定。その後どうするかはまだ分かりませんが、もう少しだけ、ポーカーで上を目指してみたいですね。

5 悩めるポーカーキッズ達へ

このブログもニッチな層では好評のようで、たくさんの方に読んでいただいてるようです。カジノでお会いした方からポーカーの道に進みたい、僕らのように世界のカジノを回ってみたい、と言ってもらえるのは嬉しいものです。

ポーカーを中心とした生活というのは、適性のある人にとってはやりがいもあるし最高の人生になりうるでしょう。実際に僕自身は、あの時決断して本当に良かったと思っています。

とはいえ、ポーカーが好きというだけで人生を賭けてしまうのは、ギャンブラーとしてお勧めできません。ポーカーの世界へ飛び込もうか迷っている人に対して、脱サラ経験者として一つ言わせて貰おうと思います。

情報収集と検討はきちんとやりましょう。

Zoomで勝てるからとライブキャッシュを舐めて痛い目を見た人は数知れません。海外ライブトーナメントを目指す人はせめて この程度 のことは頭に入れておくべきだと思うし、オンラインポーカーを主軸にする人は、その変化の早さに注意を払う必要があります。ここ数年の変化をもとに、将来環境を予測して然るべきでしょう。

人生の一大事を思い切りだけで決めてはいけません。ごく当たり前のことです。

このブログを読んで、それでもこの業界に飛び込みたいと言ってくれる方へ。いつかあなたとも金を奪い合えることを楽しみにしています。一足先にカジノでお待ちしていますよ。

マカオ旧正月で負けてます。ちくしょう

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