ドキュメンタリー 五人の子猫たち③

つい最近、イギリスの国民投票でEU離脱支持派が勝利するという大きなニュースがありました。円も一時期高騰しましたが、ポーカープレイヤーは円高の煽りをもろに被るもの。生活の拠点が海外である僕らは、勝ち取った外貨をその場で使う地産地消という側面はあるものの、外貨資産の日本円換算額面が減っていってしまうのは悲しいところです。

ポーカー市場はグローバルな経済に大きく影響を受けるため、この世界で生き残っていくには広く長い視野での戦略も必要。為替市場、国際経済とも予断を許さない状況であり、ポーカープレイヤーとしても注視しておきたいものです。

とはいえ、ラスベガスに滞在している間は、ただ目の前の1ハンドに集中するのみ。若武者たちの挑戦もいよいよ中盤が過ぎたあたりです。ひたすらポーカーと向き合う毎日を送る彼らの様子はいかがでしょうか。

みなさま方の声援を糧に、頑張っているようです。さあ、それぞれの奮闘の様子をご覧いただくことにしましょう。

”しま”

収支推移しま0625

 <概況>
ライブキャッシュでのプレイに適応してきたのか、ぐいぐいと成績を伸ばしている。稼働時間も安定して確保しており、ポーカープレイヤーとしての生活を楽しめている様子。

 <ハイライト>
ポーカー中に仲良くなったカイーンはキューバ出身の同年代プレイヤー。ちょっとティルト癖はあるけど話してみると良い奴で、お互いの身の上話やポーカートークで拙い英語ながら盛り上がった。ポーカー中にできた初めての外国人の友達だ。

連絡先も交換して、何度かメッセージしたりカジノで会えば話すぐらいの友人となったある日の朝のこと。カイーンからいつものようにスラング混じりのメッセージが入っている。その文章の意味がすぐには理解できず、やりとりをしていくとどうやら$200を貸して欲しいと言っているようだ。一緒に来ているお兄さんが急にいなくなって、ホテル代が支払えないから貸して欲しいと。

お金の貸し借りはしない主義なんだと伝えるも、何度か粘りのメッセージが。いやいやいや、仲良くなったとはいえ知り合って1週間ぐらいの関係でそんなこと頼むなんておかしいだろ。しかも従兄弟がラスベガスにいるとも言っていたし、その人に頼みなよ。

なんとか断りきって安心した翌日、カジノには彼の姿が。しかも$500持ってポーカーしてるし!別の人から借りた金なのか、無事お兄さんと会えたのかは聞けずじまいだったけど、どうしても彼に対する不信感が拭えなかった。最初から金目当てで話しかけてきたのかな、とか考えてしまうとなんだか世知辛いな。

もやもやした気持ちをプレイにぶつけ、同卓した彼からも$200以上を見事勝ち取った!泣きついてきても貸してあげないからね!

”しゃむにゃむ”

収支推移しゃむにゃむ0625

 <概況>
開幕から安定して勝ち続け、なんと怒涛の13連勝!6月中旬からはその勢いが失速するも、本人はベガスライフを満喫している模様。む?何やらポーカーの稼働時間も余り伸びてないように見えるが・・・。

 <ハイライト>
ポーカーの勝ち負けなどもはや大したことではない。何故なら、彼にはラスベガスで最近気になる女の子ができたのだ。

連絡先も交換することができ、勇気を振り絞って誘う初デート!返事を待つ間、とてもポーカーどころではない。$15にオープンレイズしようと赤チップ3枚を出したところ、間違って緑チップ3枚の$75を出してしまう始末だ。若い彼がポーカーが手につかなくなってしまうのを、誰が責められるというのか。そしてとうとう熱い想いが実を結び、二人で食事をすることに。即ちデートだ。

初デートに向けて、服装も新調して臨むしゃむにゃむ。購入したのは、シャツ5枚とパンツ2本とぴかぴかの白いスニーカー。もはや普段の身嗜みそのものから見直す程の気合の入れようである。さて、詳細をここに記すほど野暮ではないが、デートではとにかく 楽しい時間を過ごせた模様。さあ、今後の展開やいかに。

なお一般論として、ポーカー強くてもモテるわけなどない。だが、ポーカーで稼いでる奴はモテるのだ。おじさんから若い人たちに贈るアドバイスはたった一つだ。稼げ。

”スティーブ”

収支推移スティーブ0625

 <概況>
ロサンゼルスでの悪夢の負けを取り返し、ようやく落ち着いてアメリカライフを過ごせるようになったスティーブ。せっかくギャンブルの聖地ラスベガスに来たので、最近は色んなカジノを見て回っている。たくさんのローカルカジノまで歩き回っていたために稼働時間はそれほど取れていないが、着実に勝ちを積み上げていっている。

 <ハイライト>
プラネットハリウッド$2-5での深夜の出来事。スティーブの座るテーブルにやってきたのは、男勝りの雰囲気を醸し出すおばさん。アグレッションが非常に高く、ブラフやタフコールを繰り返す荒いプレイを見せている。案の定、30分ももたずに最初の$500を無くし、再び$500をバイイン。しかしそれもすぐに熔かしてしまう。なんだかちょっと涙ぐんでいるようにも見える。再びバイインをすべく財布から出てきたのは$360。おそらくこれが持ち合わせの全てなのだろう。それまでの負けに懲りたのか、今度は打って変わってタイトにプレイ。しかし、ツキも無く彼女のスタックはじりじりと減っていく。

そんな中でスティーブに入ったのはAK。彼のオープンレイズに対し、そのおばさんから$130のオールインが飛んできた。いくら彼女がタイトになっているとはいえ、当然コールだ。興奮しながら彼女が見せたのはAA。スティーブのAKに対しては92%もの勝率を誇る。しかし、不幸な時にはそれも無力なもの。あっさりとフロップにKが2枚落ち、彼女が持っていたチップは全てスティーブの元へ。

しばし虚空を見つめるおばさん。2か月前にはオレもこんな気持ちになってたな、と少し彼女に同情するスティーブ。

と、おばさんはふと我に返り、急に笑顔になって彼の下へ。 「ナイスハンド。」 そう言いながら財布を取り出し、その中身を全てスティーブに手渡す。 「これもあげるよ!私の持ち金全部!」 その総額、$6である。あまりに咄嗟のことで、断ることもできず$6を受け取るスティーブ。そして彼女は笑顔のままカジノを去ったのであった。

おばさんから手に入れた$136、何だかよく分からないが持っているのが怖い。縁起が悪い気がしてならないのだ。いったいどこに寄付すればこの厄を払えるのか布団の中で真剣に考えるスティーブであった。

”ゆうへい”

収支推移ゆうへい0625

 <概況>
強い。$10-20にも挑戦を開始し、順調に駆け上がっている。レギュラーが一気に強くなるとされる$10-20であるが、そんなテーブルでも充分に通用する手応えを得ているようだ。さらにトーナメントでも#23 $2,000NLHでは$11,000の賞金を獲得。ハンドレビューをしてみても、見事にライブキャッシュに適応した感覚を既に身に付けており、もはや隙無しなのか。

 <ハイライト>
調子よくポーカー資金を増やしており、とうとう$10-20にも挑戦。初日に見事200bb超の勝利を飾り、さらにアグレッシブに挑戦できる態勢が整った。

数日プレイをしてみた彼曰く、$10-20の上位レギュラーのレベルはオンラインZoom 200NLと比べても遜色ないらしい。彼とて決して楽に勝てる環境ではないが、高いレベルのフィールドで戦い、そして勝つのはポーカーの醍醐味でもある。何しろ彼は200NLですら勝てる実力の持ち主。その眼はどこまで高みを見つめているのか。このWSOPシーズンなら$50-100 NLHも立ってるからね!

”ケンスケ”

収支推移ケンスケ0625

 <概況>
一旦はまさに崖っぷちに立たされたケンスケだが、背水の陣で臨んだ勝負に勝ってからというもの怒涛の巻き返しを見せ始める。このまま勢いに乗りたいところだったが、折しもカレー屋は大忙し。ちょうどヘビーシフト週間で毎日12時間カレーを作らねばならず、さすがの彼もポーカーをプレイする時間は取れなかった様子。シフトも落ち着いたことだし、ここから浮上だ!

 <ハイライト>
虎の子の$200を握りしめたケンスケが戦いの場に選んだのはフラミンゴ。カリスマギャングのベンジャミンシーゲルによって作り上げられた、ラスベガスの中でも最も歴史を持つカジノの一つだ。生きるか死ぬかの戦いの舞台には相応しい場といえよう。

決死の覚悟で挑む彼の気迫は、見事$550の勝利を呼び寄せる。これをきっかけとして、これまでの負けが嘘だったかのように勝てるようになったではないか。たった一つの勝利が、時に男の子を漢に変えてしまうものなのだ。まだまだこれからだ、ケンスケ!

さて、五人の子猫たちの頑張りはいかがだったでしょうか。前回の経過報告から、なんと全員の収支が上向くという異常事態。念のため言っておきますが、いくらポーカーが強くなっても、普通はそんなに安定して勝ったりできません。これだけ安定した右肩上がりが揃うというのは、かなりの上振れ状態と言えるでしょう。でも大丈夫。ちゃんと幸運があれば不運もあるもの。

そう、僕が負けているのです。

どうにもツキに恵まれず、まるで五人分の原罪を一手に背負ったキリストかのよう。軽口を叩きつつ、正直おじさんも必死です。何しろこの若い5人よりも僕の方がポーカー稼働時間長いですからね。まだまだあと一か月、おじさんの沽券にかけて挽回したいと思います。

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firepoicat苦悩の一か月

収支推移poicat0625

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