見事な地上絵の全体像を空中から眺めた後は、地上で至近距離から見てみるとしましょう。
地上絵のキャンパスとなっているのは、平坦で広大な砂利砂漠。もともとは白い色の大地ですが、表面に5センチほどの赤黒い酸化被膜があるため、火星のような色になっています。
地上絵の正体は、この大地に刻まれたごくわずかな溝。なにしろ線自体は幅20センチ、深さ5センチしかありません。溝というよりも、大地表面の砂利をよけただけという感じ。
こちらの写真は11kmに及ぶ、最も長い線の一つ。車の轍程度の溝でしかありませんが、これが上空からはちゃんと線に見えるのです。
ありのままを話すと、
「砂利の多い校庭に、摺り足でドッジボールの線を描いたら、1,000年後まで残ってた」
何を言ってるかわからないですが、そのくらい不思議な現象なのです。
そもそもの大地は、一様に砂利が転がっています。つまりこの大地が形作られるにあたっては、風や雨などで一様な分布となったはず。それが、西暦約600年に描かれた地上絵が今もその姿を留めているということは、すなわち。
ナスカ時代からこの大地はエントロピーの増大を拒んでいるのです!
これこそ悠久のロマン。統計学をかじる者としては、なんとも感慨深い世界遺産であります。
空に上がればはっきりと見て取れるナスカの地上絵ですが、地上からはほとんど判別することはできません。そこで唯一設置されている観測塔に登れば、 「Tree」 と 「Hand」 だけは観測することができます。ガイド図の赤丸部。
高さ20mほどのシンプルな観測塔。aileenザウルスにかかれば一蹴りで倒れてしまいそうです。
結構強い風が吹いていますが、勇気を出してこわごわ塔に登ると、見えました!右手は4本指、左手は5本指の 「Hand」 です。実は他の「サル」などの図柄も4本&5本指になっていて、何か重要な意味があったのかもしれません。
実は、この地上絵は描くことはさほど難しくはないそうです。最初に小さな図形を描いたら、あとはロープと杭を使って相似形を大きくしていくだけ。とはいえ、何のためにこれだけ大掛かりなものを描いたのかは未だ謎のまま。
何よりも不思議なのは、せっかく出来上がった地上絵の全体像を、当時は確認する手段が無かったと思われることです。周りはずっと平坦な大地で、遠くの山からは見えるとも思えません。
描きあがった姿を見れなくして、こんな芸術を完成させることができるのでしょうか。当時の人たちは秘密の空を飛ぶ手段を持っていたに違いない・・・とか考えたくなります。
慌ただしい日程でしたが、ナスカはロマンを感じさせますね。来て良かった。地上から近くを見に行くのもおススメです。この後は14時間の長距離バスでクスコに向かい、そこからマチュピチュにトライです。
おまけ画像は2,000年前のナスカの女性ミイラ。